
ゲームを作っている時、あるいは作ろうと思った時。もやもやと頭にアイデアがあっても、それを上手く言葉として表現できない時がある。
キャラクターは思い浮かぶのに、彼らが活躍する世界観やストーリーが思い浮かばない。またはその逆で、ストーリーは浮かぶけど魅力的なキャラが出てこない。
ゲームに限らない、小説でもマンガでも、映像作品でもいい。創作活動をしていて、そんな思いをしたことはないだろうか。
俺はある。「どことなく淋しい雰囲気のゲーム」を作ろうとしたけど、それ以上の何か具体的なアイデアが出てこなかった時があってね。
ずいぶんとアバウトな表現だ……。確かにそれだけじゃ、どこから手を付けたらいいのか分からないよね。
今回は、そんな「作りたいものはあるのに形にできない」を解決するためのアプローチを紹介していこう。決して万能な方法ではないけど、同じ悩みで行き詰まっているクリエイターには、参考になるはずだ。
アイデアを引き出すには
他の作品を参考にしよう
自分の中であれこれ悩んでどうにかできない時、大抵の場合は外から刺激を与えると解決することが多い。
へえ、そうなんだ。じゃあ軽く一発殴ってあげるね。
そういう話じゃない!
見出しにすでに書いてあるが、要するに「他人の作品を参考に、アイデアをひねり出そう」という話である。
はいそこ、「パクり乙」とか言わない。話は最後まで聞こうね。
パクりに関しての講釈は、後で語る。
この記事は「アイデアをひねり出す方法」を書く記事なので、まずはそれについて記載したい。
ちなみに、どうしてもパクり乙としか思えず拒否反応を示しているなら、今のうちに回れ右をして一向に構わない。
さて、前置きが済んだところで本題に入ろう。
作品を参考にすると言っても、いろいろなものがあるよね。ゲーム・アニメ・映画・音楽・小説……。どれを参考にすればいいの?
基本的には、
ゲームが好きで、自分で作ってやろうと思っているくらいだ。遊んだゲームなんて両手じゃとても収まらないだろう。
収まっちゃう人は?
それはどう考えてもゲームそのものを知らなすぎる。まずはつべこべ言わずに興味をもったゲームを5本は遊びつくしてから、この記事をまた読みなおしてほしい。ゲーム以外でも同じだ。小説をろくすっぽ読んでない人が、小説を書けるはずないよな。
まあ、それは確かに。
参考にする上で特におすすめなのは?
話を戻そう。ゲームを作りたいならゲーム以外、マンガを描きたいならマンガ以外を参考にするといい……のだが、その中でも特におすすめの媒体を紹介しよう。
ずばり、それは
マジカル・ヴァイオレンス? なにそれ。
こっちが聞きてえよ! それはそれで斬新なアイデアだな!
MV……もちろん、ミュージック・ビデオのことだ。
ミュージシャンが、自身の楽曲のイメージに合わせて作る映像作品のことである。
ふーん、ミュージック・ビデオね。なんでこれがおすすめなの?
短くシンプルにまとまっているからだ。それ故に応用がききやすい。
ふーん? もう少し詳しく説明してくれるかな。
説明するより、実践したほうが早いだろう。サンプルとして、公式がYouTubeで配信しているMVをもってきたので、これを題材に説明してみよう。
Lyu:Lyu の「メシア」という曲のオフィシャルミュージックビデオだ。選考基準は特にない。強いて言うなら「動画にある程度のストーリー性がある」ことぐらいか。
うん、とりあえず、これを視聴すればいいのね?
ああ。歌詞でもいいが、動画のほうに注目して見てくれ。
外出先のスマホから見ているなどの理由で動画が見れない場合は、後で見ておくことをおすすめするぞ。この動画を見たことを前提に話を進めるから。
うん、見終わったよ。で、ここからどうすればいいの? まさか、これをそのままゲーム化しろなんて言わないよね?
それをパクりと言うんだ。安心しろ、ここからが本題。
じゃあ、さっきのミュージック・ビデオのストーリーを、一言で説明してくれ。
えっ? 一言で?
そう、一言で。ダラダラ長文にする必要はない。コンパクトに「これはどういう話か」をまとめてみよう。
この記事を読んでいる人も、考えてみてください。
うん、できた。「女の子が取り残されるお話」かな。
俺もできた。「男女で殺人の隠ぺい工作をする話」だ。
うわ、私と違ってずいぶん殺伐としたまとめ方……。
それでいいんだよ。受け取った人がどう感じるかは多種多様なんだ。その違いを作品に反映させるから、パクりにならず独自性が生まれるんだろ。
リコは、あの映像を見て、最後に置いていかれるシーンに注目して「女の子が取り残される話」としてまとめた。主人公は女の子だ。その一方で、俺は死体遺棄という行動に注目してまとめてみた。主人公は定めず、全体を俯瞰した見方だ。
このように、同じものを見ても、人によってどのシーン・どの人物に注目するかが異なってくる。だから、参考にすることが必ずしもパクりにはならないんだ。その微妙な違いを根っこにして、そこから話を広げていけばいい。
なるほどね。
なぜミュージックビデオがおすすめなのかというと、歌詞と合わせて初めて理解が深まる映像作品が多いからだ。つまり、映像だけ見ると、解釈にゆらぎが生じるぼやけた映像として鑑賞できる。その揺らぎを利用してしまおうというわけだ。
揺らぎを利用?
先ほどの「メシア」のミュージックビデオを例に話を進める。
「女の子が取り残される」というまとめ方をしたなら、なぜ、あの話で、女の子は取り残されたのかを考えてみよう。
いろいろな理由が考えられるだろう。
・罪を着せられることを男の子が恐れて、逃げ出したから
・逆に、男の子が自分一人で罪を背負おうとしたから
・女の子の顔が好みじゃなかったから
ちょっと!最後の理由はなんなのよ! ただのギャグじゃん!
ただのギャグにするかどうかは、作り手である君の感性次第ってことだ。
最初の原案は、他人が作ったアイデア。でも、そのアイデアをどう自分好みに仕上げていくかは、自由なんだ。この「なぜ」の理由付けに関しては、自分の気に入ったものを選んでいけばいい。
▲シリアスな戦闘シーンで、顔をネタに笑いを取るも作り手の自由。
「男女で殺人の隠ぺい工作をする」場合なら、なぜ殺したのか、なぜ通報せず隠し通すことを選んだかなどを考えみればいい。
あまりにざっくりまとめてしまうと、どこかしらにツッコミどころが生まれてくる。
その1つ1つに自分でツッコミを入れ、理由を考えていく。
それを繰り返して話を広げ、独自のストーリーやキャラクターを作り上げていけばいい。
ミュージックビデオ以外を参考にする場合でも、「
気がつけばオリジナルが出来上がっているはずだ。
それでもアイデアが出てこない人は?
あのさー、1つ質問があるんだけど。その「なぜ」すら出てこない人はどうすればいいの?
うーん。その場合は、なぜではなく「こうだったらいいな」で考えてみてはどうだろう。さっきのメシアで例えるなら、「逃げ出した後に再開して、そこで抱き合ってまた2人で暮らしていけたらいいのになあ」とか、「男は殺人の瞬間を映像に収めているんだから、それを警察に突き出して女の子を逮捕すればいいのになあ」とか。
相変わらず、夢のないアイデアも例に出してくるわね……。
「こうだったらいいのに」という自分なりのこだわりや好み。それらを原案につぎ込んでいって、自分なりのアイデアへ発展させていくのはどうだろう。自分の理想に近づけていけばいいので、幾分やりやすいはずだ。
ただその場合も、最後には「なぜ」を自分で考えておかないと、作品に触れた人たちが「なぜ」とツッコミを入れたレビューを書くことになるぞ。
なるほど。ストーリーのツッコミどころを無くすための作業でもあるわけね。
まとめと補足
あのー、ちなみに、「こうだったらいいのに」という理想すら思いつかない人はどうすれば……
それなら、もう作るな。
!!
作り手なら、自分の中に何かしらこだわりがあるはずだ。作りたいものがあるはずだ。逆に聞くが、作りたいものがなにもないのに、どうして「作ってみよう」と思えるんだ?
最後には自分の中にあるこだわりで作品を作り上げる必要がある。何から何まで他の方法でアイデアを引っ張ってきても、所詮はただの寄せ集めだ。こだわりのない作品が誰かの心を動かすことはない。
この方法は、自分の中にある「形にできないアイデア」を引き出す方法だ。最初から何ひとつこだわりがないなら、こだわりが生まれるまでいろいろな作品に触れて感動し、自分の中の傑作を見つければいい。
もし君が、自分の中で「作りたい」と思う気持ちが強くあるのなら、必ずそこにこだわりや理想があるはずだ。そのこだわりを意識しながら他の作品に触れてみたら、どこかに必ず不満が生じる。その不満こそが、君独自のアイデアの原点になるだろう。
うん、確かにその通りだね。自分の中のこだわりまでよそから取ってきたら、どこに自分らしさが反映されているのか分からない作品になっちゃう。こればかりは、自分で培っていかないと。
[su_box title=”まとめ” box_color=”#a20e12″]・他人の作品、特に、ストーリー性のあるミュージックビデオを参考にする
・その作品の内容をざっくり一言でまとめてみる。
・「なぜ」と「こうだったらいいのに」で肉付けをしていく[/su_box]
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